ブログ 牧田総合病院

心筋シンチグラフィを行う意味とは?

心臓は全身に血液を送るためのいわば「ポンプ」です。その心臓を栄養するための重要な血管が冠動脈と言われるもので、主に右冠動脈(RCA)、左前下行枝(LAD)、左回旋枝(LCX)の3つの血管から成り立っています。この冠動脈が何らかの原因で狭くなったり詰まったりしてしまうと、その血管が栄養している範囲の心筋の細胞に障害が出てきてしまいます。この状態を虚血性心疾患といい、狭心症や心筋梗塞などがこれに当たります。

この冠動脈をみるために行われる検査として、冠動脈CTやカテーテルを使用した冠動脈造影検査、心筋シンチグラフィがあります。冠動脈CTや冠動脈造影検査では冠動脈の形状や心臓の内腔の状態をみることができますが、心筋の状態をみることはできません。対して心筋シンチグラフィの薬は特性上心筋細胞にたまるので、心筋に流れる血液の量や心筋の機能を画像で表すことができ、心筋の弱っているところには薬が取り込まれず、元気なところに多く取り込まれます。これによって心臓の虚血の診断、重症度、今後の治療方針の決定や予後評価などを推定することができます。

検査手順

検査の流れは次のようになります。

  1. 来院→着替え→注射
  2. 安静状態での撮影
  3. 負荷検査
  4. 1時間の休憩
  5. 負荷状態での撮影
  1. 来院→着替え→注射

来院されたらまず上下検査着に着替えていただきます。この着替えの案内の際に朝食を食べていないか、カフェインを含んだ飲み物などを摂取していないかをお尋ねしますのでご協力をお願いします。

すべての身支度が整いましたら、処置室で心臓に集積する放射能を含んだ特殊な薬を肘の血管などから注射します。

  • 安静状態での撮影

撮影のベッドに仰向けで寝て両手をあげ、心電図を装着して撮影を約15分間行います。この際撮影のカメラが体にかなり近づき圧迫感を感じることがありますが、カメラには赤外線センサーがついており、体には接触することはないのでご安心ください。また深呼吸をしてしまうと心臓の位置が上下に大きく動いてしまうため、普段通りの呼吸を心掛けていてください。

  • 負荷検査

負荷検査をするためのベッドに移動し仰向けで寝て、より詳しい心電図を得るための機械や血圧計などを装着し、心臓に負荷検査を行っていきます。

当院では主にアデノシンという薬を使って負荷検査を行いますが

  • 喘息のある方
  • 事前に朝食を召し上がっている方
  • カフェインを多く含んだ飲み物を飲んでいる

このような場合アデノシンは使用できないので、実際にエクササイズバイクを検査室内で漕いで行う場合もあります。薬を使って心臓に負荷をかけていく場合は6分間、実際にエクササイズバイクを漕いでいただく場合は、目標の心拍数に達するまで行います。心臓に負荷をかける際は心臓が運動している時と同じ状態になるので、胸の痛みや息苦しさが出ることもありますが、医師立ち合いの元、心電図や血圧を定期的に測定しながら行いますのでご安心ください。

  • 1時間の休憩

負荷検査が終わると1時間休憩です。この休憩の間に投与した薬が腸の方に早く排泄されるように、脂肪分を多く含んだ牛乳やチョコレートなどを摂取していただきます。また安静時の撮影の際に使用した心電図のパッチが体についたままになっていますが、これは次の負荷状態での検査でも使用するのではがさないようにお願いします。

  • 負荷状態での撮影

安静状態での検査と同様に仰向けで両手をあげ、心電図を取り付けて撮影を約12分間行います。次に心電図をパッチごとはがしてうつぶせの状態で両手をあげ、撮影を約10分間行います。この撮影も安静状態での撮影と同様に、深呼吸をせず普段通りの呼吸を心掛けていてください。

安静状態と負荷状態を両方撮影する意味

心臓に負荷をかけている時は心臓に流れる血液量が多くなります。冠動脈が狭くなっているとそこの部位以降に十分な血液がいかず、画像上ではまわりの部位と比べて色が暗くなります。安静状態ではもともとの血液量が多くないので周りの部位と比べてもさほど変わらないくらいになります。この状態を狭心症といい、この冠動脈が完全に詰まって血液が全くいかなくなった状態を心筋梗塞といいます。心筋梗塞の場合は負荷状態でも安静状態でも詰まっている場所以降には血液はいかないので、画像上では狭心症よりもさらに暗い画像になります。このようにして両方撮影をすることで、狭心症か心筋梗塞かを鑑別することができます。

当院では負荷心筋シンチグラフィを毎週月曜日(祝日は除く)の午前中に行っています。

何か心臓で気になるような症状があれば当院の循環器内科をご受診ください。

放射線部 U